AngelBeats!

コラム - リレーコラム AngelBeats!よもやま話

私の手元に残る議事録には、こう書かれてあります。

麻枝、壮大な計画案を前に。
【麻枝】まだOKの返事した覚えはないんですが……。
【中辻】私の中では決まっているんです。ははははは。

――時間経過 次第に前のめりになる麻枝――

【藤井】今日お答えしなくても大丈夫ですよね?(牽制球的に)
【鳥羽】はい、大丈夫です。今日の今日答えてくれ、ということではありませんので

【麻枝】企画のブレインストーミングは誰とやったらよいでしょうか?
【鳥羽】出発点としてKey作品が好きな人を選ぶべきだと思うんですよ。じゃないと厳しい作業になってしまいます。

――さらに時間経過 汗をかきつつ、熱い情熱をまき散らす鳥羽プロデューサー――

【麻枝】じゃ、やろうか。
【藤井】えー!? 俺っすか!?
【全員】ありがとうございます!

Angel Beats! はこんな流れで始まりました。一部嘘ですが。

皆様こんにちは。株式会社ビジュアルアーツの藤井でございます。
誰やねん自分、というツッコミが聞こえてきそうですが、藤井は普段Keyで進行管理やシナリオアシスタントを担当している者で、縁あってAngel Beats!に参加させていただきました。

リレーコラムということで、先の皆様とは逆に、当社の内側から見たAngel Beats!の制作状況や昔話などを書いていこうかなと考えてます。

既にプロデューサーの鳥羽さんが第1回で書かれてますが、本当に麻枝 准は断る気満々だったんです。
「もう書けない。感動できる話なんか出てこない」とか弱音を吐いてましたし。
会議に入る前の打ち合わせでは「話聞いて断って終わりだね」等とも申しておりました。

なので、2時間後に麻枝が「じゃ、やろうか」と言った瞬間、一番驚いたのは私だと思うんです。はい。
鳥羽さんの情熱はハタで見ていた私にも伝わっており、やっぱり熱意は大事なんだなぁと感心しておりました。
ただ、アポ依頼をいただいた際、藤井は「どのみち断るなら、いっそアポごと断ったらいいんじゃない? 手間掛からないし」と何気にヤバイ事を考えてましたけど。

さて、経緯はどうあれ、敬愛する(ホントですよ?)麻枝 准が決断したため、お手伝いすることになりました。
今回は麻枝 准がひとりで脚本を書くので、シナリオアシスタント的な仕事は発生しません。
「物創らなくて気楽だなぁ」とぼんやりしていたところ、なぜか脚本会議に参加することになってました。今でもよくわかりませんが、主な仕事をまとめると「雑用」となりますでしょうか。

すべて事務的な仕事なので、ぼちぼちと本業(Rewriteの進行管理等々)と並行作業中ですが、あまり役に立っている気がしない上にキャラクターデザイン担当の弊社Na-Gaから、生来の忘れっぽさ故によくフォローされてます。
Na-Gaさん、いつもありがとうございます。

脚本のラフを制作中は、いろいろと麻枝から調べ物の依頼がありました。
自席にある内線が鳴り「○○を▲▲させたいんだけど◆◆◆みたいなものはある?」という、麻枝のよく判らない質問に対し、口八丁で似合いそうなものを出していきます。本当は実際あった会話をそのまま書きたいのですが、超弩級のネタバレになるのでしばらくは秘密です。上とか裏とか。

そうこうしてる内に時も過ぎ、脚本のラフが完成します。
昨年から今年に掛けて続いた麻枝の脚本作成は見ていて楽しかったですね。
充分に面白いネタがあるわけですが、脚本会議の後に修正が入ると、もっと面白くなっていくのがリアルタイムに見られたのは良い経験でした。 そんなとき藤井はゲラゲラ笑いながら「ああ、麻枝 准はやっぱ天才だなぁ……」とつくづく感じ入り尊敬の念を思い出すわけです。無論、思うだけで本人に言うことは絶対に無いんですが。

天才、といえば麻枝はご存じの通り、音楽も担当しているのですが、これも天才的な仕事です。
麻枝 准Blog「Angel Beats!開発日記」で本人が触れていましたが、ボーカル曲は非常に良い曲に仕上がっています。つか、麻枝と藤井は音楽やマンガの好み、果ては女性の容姿までことごとく趣味が違うので、新しい曲を聴かされたりしてもピンとこないことが多いのですが、今回のは卑怯なくらい格好良かったです。今すぐお聴かせできないのが残念なくらい。
不安な点としては「藤井が褒めると、世間様ではあまり人気が出ない」というジンクスがあるくらいですかね。

そんな音楽制作ですが、藤井はというと、スケジュール管理などでうろうろしています。
たとえばボーカル収録で麻枝が東京出張です、との時にはスケジュール表や地図などをまとめます。なんかステータス振り分けで「クリエイト」という項目に全振りしたかのような麻枝 准さん(34)は、それがないと現地に到着でき……いえいえ、不安で仕方ないそうなので、万全を期すわけです。
そんな出張当日、藤井は遠く大阪の空の下から「ちゃんと着いたかなぁ。道に迷ったり、乗り換えを間違えたりしてないかなぁ。お腹すかせてしょんぼりしてないかなぁ……」などと同い年の上司的立場な人を捕まえて、失礼な心配をしていたり。

まあだいたい問題なく帰ってくるわけですが、毎回のように「壮絶だった……」と精根尽き果てた顔を見せるのは、現場で全力投球してきた結果、といったところでしょうか。

そんな甲斐もあり、着々とできあがりつつあるAngel Beats!は、麻枝 准が燃え尽きる程精魂込めて仕上げた作品でございます。(燃えカスとなった麻枝は電撃G's Festival! Vol.5でインタビューとして見られます。09年12月26日発売で全80ページのKey特集号。3大付録付きですよ!)

端で見ていて、少々可哀想になるくらい一人で黙々と、しかし苦しみながらシナリオを書いていく姿は、本当に頭が下がる思いで一杯になります。それは麻枝だけではなく、Angel Beats!に関わった全てのスタッフにも同じように感じています。
決して、がんばって作ったから面白いものになる、というわけではありませんが、麻枝含め、岸監督を先頭にスタッフ総員の熱意が籠った作品になることは確信しています。

当代一流の腕を持った方々の力を借り、新しいグラウンドで挑戦する麻枝 准をお楽しみに。

雨の日、大阪より
株式会社ビジュアルアーツ 藤井 知貴

※第5回リレーコラムは2010年1月15日に掲載予定です。

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